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くどかんへのマーケティング的アプローチ

友達とメールをやりとりしていたらつい白熱してしまったので、せっかくだから残しておく。本当に私が友達宛に書いたメールから抜粋しただけ。ちなみにこの前段には、さまざまなくどかん作品の特徴の一般化等が議論されていて、最終的な命題は「なぜ外れ値を描く作家がメジャーに認められる作品群を作りうるのか」ということ。それに対する私の回答めいたもの。あ、くどかん=宮藤官九郎です。

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くどかんを分析する上でひとつ忘れちゃいけないことがあって、それはくどかん作品には、「原作」があって彼が「原作」のシナリオ化という作業のみを行っているものと、原作なしで彼がストーリーから作っているものがあるということ。だいたい半々くらいじゃないでしょうか。IWGPの原作はご存知の通り石田衣良、GOは金城一紀・・・などなど。木更津キャッツアイやマンハッタンはくどかんオリジナルです。

ストーリーから彼が書いたものはもちろん、原作があるものをも、全てくどかん色に染めちゃってるんですね、彼は(それがあなたの言うところの「中央線の色濃い世界」なんだろうし、私が言うところの鬱屈した世界観なんだろう)。彼の能力が全体として優れているという話にすると面白くないので、無理矢理考えてみます。

ひとつ言えるのは、彼の作品は決してメジャーではないと思います。所謂メジャーとは違った売れ方をしている。ドラマに関して言えば、IWGPも木更津もマンハッタンも、リアルタイムの視聴率は非常に悪いのです。でも口コミによって徐々に徐々に話題になり、有名になったんです。口コミのよって売れるというのは、マーケティングで言うところの経験財や信頼財(医療や金融や美容院等、実際にサービスを受けてもそれが本当に最良なものだったのか自分でも判断しきれない財)の特徴で、またブランドが形成されるステップでも非常に効果の高い拡散方法のひとつです。

何が言いたいかと言うと、彼の脚本はブランド化しているのではないかということ(意図的かどうかはわからないけど)。北川悦吏子、岡田惠和、野島伸司、坂元裕二etcくどかんと同世代もしくは少し上の世代で、ヒットメーカーと言われる視聴率がとれる脚本家たちは厳然と存在しますが、彼らの脚本はブランド化していないと思いませんか?こういうタイプの作品だったらこの人、と決められないでしょう。しかし、くどかんはあなたの言う「中央線の色濃い世界」を描かせるならこの人、と決められたりしませんか。

同じようにブランド化している人として、三谷幸喜があげられると思います。彼の作品はテレビだと古畑以外ヒットしていない。ある特定の層にのみ受け入れられているという現象があります。これは視聴率とは全く別物の軸です。ブランドは万人に受け入れられるものではないから。そして、くどかんにしろ三谷にしろ、舞台だとおそらく彼らのブランドにヒットする層と必要観客数がマッチしてチケットがとれなくなるのではないかと思います。

ただ三谷の場合、原作があるものを脚本化するというのはやっていないので、そういう意味ではやっぱりくどかんとは違っています。原作を他の人に任せられるということは、ある意味生産を分離しているので量産が可能です。量産すれば浸透は早まります。原作が他の人でも自分のブランドを創れるというのは、もうこれはロジカルな説明が不能で、これこそが(ネタ元が何であろうと他の脚本家とは異なる自分の色を出せることが)彼の力なのではないかと思います。
by autumnt | 2004-05-08 01:16 | 研究メモ
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